あの雑音たちが、雑音に聞こえなくなったのでした。
子供は、楽しそうに笑い
犬は元気に歌い
特に阪急電車は家を笑わせながら通りすぎるように感じるのでした。
おばさんも久しぶりに鼻歌を歌いながら料理を作っています。
そうです、おばさんの家はこの時から楽しい音に包まれ出したのでした。
その頃、一生懸命ウサギは庭で穴を掘ります。
おばさんの小さな庭は何年も放置されていたので荒れ放題でした。
土は、コンクリートのような固さになっていました。
それでも、ウサギは一生懸命穴を掘ります。
いつまでも、楽しそうに土を掘っているのです。
そこに、なにかあるからではなく、
ウサギは、そこに土があったなら、掘らずには、いられないのでした。
掘りたいから、掘るのが好きだから、ただ、無心に土を掘っているのでした。
おばさんが、食事を終え、ウサギの様子を見にやってきました。
ウサギはおばさんを見つけてそばに寄って来ました。
おばさんは、ウサギの顔を見てびっくりしました。
折角の可愛い顔がドロだらけです。
折角の真っ白な毛並みが土色になっています。
おばさんは、小さな庭を見渡してもう一度びっくりしました。
庭中穴ぼこだらけです。
もともと荒れた庭だったけれど、今はもっともっと荒れています。
おばさんは、一瞬カッとなってウサギを叱ろうとしましたが、
それを大きなため息に変えて、寄ってきたドロだらけのウサギを優しく撫でました。
無邪気なウサギの目を見て、怒る気持ちがフっと消えたからでした。
そして、決心すると、おばさんもドロだらけになりながら、
ウサギの掘った穴を今度は埋める作業をし始めました。
ウサギは穴を掘ります。おばさんは、穴を埋めます。
日がくれるまで、それがずっと繰り返されたのでした。
PR