道の隅に、綺麗な、可憐な、花がいくつか咲きました。
ある少女は、その花に気づき、話かけました。「きれいだね」。
ある少女は、その花に気づき、躊躇う事なく引きちぎり去っていきました。
ある少女は、その花に全く気づきませんでした。
ある男は、その花に気づき、口笛を吹きました。
ある男は、その花に気づき、躊躇う事なく引きちぎり去っていきました。
ある男は、その花に全く気づきませんでした。
ある初老の男は、その花に気づくと、一番小さな花を一つ踏み潰しました。
ある男は、咲いてる花には気づきましたが、踏み潰された花は目に入りませんでした。
ある少年は、咲いている花を発見し近づきましたが、踏み潰された花を目撃すると、顔を背けました。
ある少女は、踏み潰された花に気づき、じっと見ていました。
その次の日も、その少女は、その踏み潰された花をじっと見ていました。
そして、その次の日、その少女は、残りの花を全て踏み潰しました。
一夜のうちに雑草が、花の残骸を覆いつくしました。
すると、あの花が咲いていた事を知るものも、いつしかいなくなりました。
何ヶ月か経ちました。
あの道の隅に、綺麗な、可憐な、花がいくつか咲きました。
あの時より幾分か強くなったあの花は、今日も青空だけを見上げています。
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