今、今(昔、昔の逆)
ウシトラの地に夢を見ないおばさんが一人おりました。
そのおばさんは、ひとりぼっちで住んでいて
慢性のめんどくさがりが災いし、友達もいませんでしたから
テレビが唯一の気晴らしでした。
しかし、最近どのチャンネルも面白くありません。
しかたなくテレビを消すと、今度は聞きたくない色んな雑音が聞こえてくるのでした。
犬の鳴く声、子供の泣く甲高い声、車、バイク、ヘリコプター、
特に阪急電車は家まで揺らしながら騒音を立てるのでした。
しばらくすると、おばさんの静かな家にあるのは、聞きたくない雑音だけになりました。
ある日、おばさんは発狂しそうになって、家をとび出しました。
このままではいけなと、向かった先は、ペットショップでした。
自分の孤独を和らげようと、ペットを飼おうと、おばさんは思ったからでした。
そこには、愛くるしい可愛い犬、綺麗なネコ、色んな種類の動物達がいました。
動物好きなおばさんは、しらずしらず笑みがこぼれます。
しかし、おばさんは値段を見て愕然としました。
とても高額で、無職のおばさんには到底用意できる金額ではなかったからです。
肩を落としながら、帰ろうと思ったその時、店の隅に一匹のウサギがいることに気づきました。
そのウサギはかなり大きくなっていて、5000円の文字が2000円に変更されていたのでした。
吸い寄せられるように、おばさんは、ウサギの近くに寄っていきました。
真っ白な毛に大きな黒目を持つそのウサギは、じっとおばさんの目を見つめます。
おばさんも、ウサギのその目を見つめます。
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